拾い作業の学習例
電気改修の拾い作業とは:数量差と新設・撤去・移設の違い
電気改修の「拾い」は、図面の記号を数えるだけではありません。何を残し、何を新しく設け、何を取り外すかを整理し、仕様と単位をそろえて数量の根拠を残す作業です。照明の台数と配管配線の長さを例に、間違えやすい違いを見ていきます。
作成・更新:2026年11月3日
最初に「何を拾うか」を決める
対象は、既存の事務室に設置済みの照明6台を改修する仕事です。旧図Aを現況、新図Bを改修後の計画として比べます。未施工の計画変更とは違い、今回は現物を取り外す作業が発生します。図番や改訂だけでなく、各図がどの時点の状態を示すかを確認します。
位置と器具台数は配置図で読み、仕様は凡例・器具表で照合します。経路が描かれていない部分の線長まで、器具の配置から推測して埋めることはしません。
照明は1台増えても、新設は2台ある
旧図にはL01〜L06の6台があります。新図ではL01・L02・L04・L05をそのまま残し、L03を撤去します。L06は位置を変えて再使用し、別形式のN01・N02を2台新設する条件です。
改修後は7台なので、配置上の数量差は7−6=1台です。ただし、購入する照明を1台とすると、新設2台のうち1台が抜けます。移設も台数を増やしませんが、取外し・再取付け等の作業が必要になります。
| 区分 | 対象ID | 数量 | この例での扱い |
|---|---|---|---|
| 残置 | L01・L02・L04・L05 | 4台 | 同じ位置に残す |
| 撤去 | L03 | 1台 | 取り外し、再使用しない |
| 移設・再使用 | L06 | 1台 | 別の位置へ取り付け直す |
| 新設 | N01・N02 | 2台 | 新しい器具を設ける |
新7台 = 残置4台 + 移設1台 + 新設2台
図面の見た目の差、完成後の配置数、購入数、現場の作業量は、別々に記録します。この式は、破損交換や別室への転用がない本例の条件で成り立つ検算です。
口数や機構数と、器具の組数も分ける
この例のコンセントP03は、差込口が二つある器具一式を1組と定義します。2口だから2組、と数えるわけではありません。器具・取付枠・プレートを一式に含めるか、構成部品ごとに拾うかで、表に記録する数量は変わります。
スイッチでも、片切機構一個の器具を一組撤去し、片切機構二個をまとめた器具を一組新設するなら、器具の組数は変わりません。それでも撤去と新設の仕事はあります。台・組・個・口のどれを数えたかを明記し、仕様と集計単位を合わせることが大切です。
移設と新設を、見積で重ねない
L06の移設費を、取外しと再取付けを含む一式で見積もるとします。そのとき、同じ取外しを撤去費へ、同じ再取付けを新設取付費へ重ねて加えると、作業の二重計上になります。一方で、器具を再使用するから費用はゼロ、と考えるのも適切ではありません。
国土交通省の単価基準では、電灯設備の該当する標準歩掛に、機材の取付け・結線・試験調整を含むとされています。すべての単価で同じ範囲を含むという意味ではありません。採用する明細の内訳と条件を読み、移設に伴う配線や別途の試験など、含まれない作業も確認します。
共用する管は3m、ケーブルの合計は4m
次に、照明の一部だけに経路条件を与えます。Jから分岐点Kまで1m、KからN01まで1m、KからN02まで1mです。J-Kは一本の管を共用するので、管の延長は1+1+1=3mです。
同じ仕様・施工条件の多心ケーブルを、J-N01とJ-N02へそれぞれ一本ずつ通すとします。各ケーブルがJ-Kを通るため、延長の合計は(1+1)+(1+1)=4mです。共用区間を管でも二回数えると、管の数量が過大になります。
この4mは二本のケーブルの延べ長さです。多心ケーブルの心数をさらに掛けた、導体の延べ長さではありません。また、今回の値は指定区間のみの計測値で、端末接続分、盤内、引込部分、購入・切断ロス等は未算定です。採用する算定条件と単価の含有範囲を確認し、決まっていない加算を一律に足さないようにします。
水平3mでも、立下りを含めると5.5m
別の対象として、コンセントP03への経路を考えます。床上2.8mの高さを水平に3m進み、床上0.3mの接続位置まで立ち下げる指定なら、上下方向の長さは2.8−0.3=2.5m。指定経路は3+2.5=5.5mになります。
平面図の3mだけでは、立下りの2.5mが抜けます。反対に、元の数量表が既に立下りを含むなら、再び加えると重複します。国の数量基準にも、壁付け機器への配管配線では、壁までの長さに立上り・引下げを加える考え方があります。
ここでの高さは架空例の指定値であり、一般的な標準取付高さではありません。5.5mという経路長だけでは、管の種類や本数、ケーブル仕様・条数、購入量までは決まりません。未図示の迂回や既存ルートの利用可否も、別に確認します。
数量と一緒に、根拠と未確定事項を残す
拾い表には、階・室、図番と版、対象ID、仕様、工事区分、単位、数量、算定式、参照位置、確認状態を残します。照明2台に集約した後も、N01とN02それぞれの根拠へ戻れるようにします。
分からない項目はゼロにせず、質問として分けます。例えば『L06の既設配線をどこまで再使用できるか』『P03の経路に何条のどのケーブルを通すか』『移設費に取外し・結線が含まれるか』です。回答を受けたら、回答日と採用条件を拾い行へ反映します。
この例から説明できるのは、新設2台・撤去1台・移設1台という照明の作業区分と、指定範囲の経路計測です。工事全体の数量や金額を確定したものではありません。対象と計算を明確にし、残る判断を担当者へ渡すところまでが、根拠のある拾いにつながります。
参考資料
図・器具ID・数値例・説明手順は独自作成です。以下の公共建築向け基準は、計測と単価の考え方を確認する資料として参照しています。実際の適用条件は各工事の契約図書・採用する積算方法で確認してください。
- 国土交通省『公共建築設備数量積算基準(令和7年改定)』
第1編 総則、及び第3編第1章第1節『配管・配線工事』(本文pp.1、6–7)
確認日:2026-11-03 - 国土交通省『公共建築工事標準単価積算基準(令和8年改定)第3編 電気設備工事』
第1章第2節『電力設備』1-2(1) 適用条件及び留意事項(E23)
確認日:2026-11-03
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